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春が近づき、雪山の空気も少しずつやわらかくなってくる頃。

今回は、富山県の大品山で1泊2日の雪上テント泊を楽しんできました。

今季の営業を終了しているあわすのスキー場から登り、雪の上にテントを張って一晩を過ごします。

今回の目的は、山頂に立つことよりも雪山の中でゆっくりと時間を過ごすこと。

雪から水を作ったり、本を読んだり、翌朝は周辺を散策したり。

そんな大品山での雪上テント泊と、春の雪山で実際に感じた雪の変化や注意したポイントを振り返ります。

 

 

残雪期の大品山へ

大品山(おおしなやま)は、富山県富山市にある標高1,420mの山です。

立山連峰の前衛に位置し、周辺には鍬崎山などの山々が連なっています。

積雪期には雪山登山やバックカントリーでも歩かれるエリアで、雪が積もると夏とは違った景色の中を歩くことができます。

今回は大品山の山頂そのものを目的にするのではなく、雪上にテントを張り、山の中で一晩過ごすことを目的にしました。

ピークを目指して歩き続ける登山も楽しいですが、目的地を決めてテントを張り、そこでゆっくり過ごす山行も好きな登山の楽しみ方のひとつです。

 

あわすのスキー場からスタート

この日は、今季の営業を終了しているあわすのスキー場から歩き始めました。

営業終了後のあわすのスキー場から残雪期の大品山へ向かう登山ルート

スタートは今季の営業を終了している、あわすのスキー場から。

 

天気は良く、風もほとんどありません。

春先の雪山としては非常に穏やかなコンディションでした。

今回は急ぐ必要もないので、休憩を取りながらのんびり歩きます。

4時間ほどで大品山周辺に到着しました。

こうした山行では、できるだけ早く目的地へ着くことよりも、重いテント泊装備を背負った状態でも疲れすぎないペースで歩くことを意識しています。

この日は時間にも余裕があり、景色を楽しみながらゆっくり歩くことができました。

 

雪上にテントを設営

雪山でテントを張るときは、どこに設営するかも重要です。

周囲の地形や斜面、風の影響などを確認しながら場所を決めます。

この日は風も弱く、気温は2℃ほど。

雪山としてはかなり暖かく、テントの外でも比較的のんびり過ごせるコンディションでした。

残雪期の大品山の雪上に設営したテントと鍬崎山

大品山での雪上テント泊。奥には鍬崎山が見えていました。

雪上テント泊は夏のテント泊とは違い、テントの下もすべて雪です。

その一方で、雪面を整えることで自分たちが過ごしやすい場所を作れるのも雪上テント泊の面白いところです。

テントを設営してしまえば、あとは特に急ぐ予定もありません。

ここからは山の中で過ごす時間を楽しみます。

 

雪を溶かして水を作る

雪上テント泊では、水をどう確保するかも考えておく必要があります。

今回は周囲の雪を溶かして、飲み水や食事に使う水を作りました。

大品山の雪上テント泊で鍋に雪を入れて水を作る様子

雪を集めて少しずつ溶かし、水を作っていきます。

 

鍋いっぱいに雪を入れても、溶かしてみるとできる水の量はそれほど多くありません。

最初から雪だけを鍋に入れるのではなく、少量の水を入れて温め、そこへ少しずつ雪を加えていくと溶かしやすくなります。

雪には小さな枝やゴミなどが混ざっていることもあります。

そのため私は、コーヒーフィルターと折りたたみ式の漏斗を使って、目立つものを取り除いています。

雪を溶かした水をコーヒーフィルターと折りたたみ漏斗でろ過する様子

コーヒーフィルターと折りたたみ漏斗を使って水を入れます。

 

雪をすべて煮沸し続けようとすると、その分だけ燃料を消費します。

今回は小型の浄水器も使いながら、持ってきた燃料をできるだけ無駄にしないようにしました。

雪から水を作る作業は少し手間がかかりますが、これも雪上テント泊ならではの時間です。

 

雪山で何もしない時間を楽しむ

この日の食事はパスタ。

雪から作った水で温かい食事を作ります。

大品山の雪上テント泊で用意したペンネとパスタソース

 

山の中で食べる温かいものは、それだけで普段よりおいしく感じます。

食事を終えても、まだ時間には余裕があります。

本を読んだり、景色を眺めたり。

特に何かをするわけでもなく、のんびり過ごしました。

登山では「山頂まであと何時間」「何時までに下山」と、どうしても時間を意識しながら行動することが多くなります。

だからこそ、山の中にいること自体を目的にして、何もしない時間を過ごすのも贅沢だと感じます。

ピークを目指さないからこそ楽しめる山の時間もあります。

 

翌朝はワカンで周辺を散策

翌朝は明るくなってから、テント周辺を3時間ほど歩いてみました。

場所によっては雪が緩み、踏み抜くところもあったため、途中からワカンを装着しました。

残雪期の大品山でワカンを履いて雪上を歩く様子

 

残雪期は気温や日射によって、短い時間でも雪の状態が変化します。

朝は歩きやすかった場所でも、気温が上がれば足が沈みやすくなることがあります。

同じ場所でも時間によって歩きやすさが変わる。

こうした変化を実際に感じられることも、雪山を歩く面白さのひとつです。

 

春の雪山で注意したクラックと雪庇

穏やかな天候でしたが、春の雪山だからこそ注意したい場所もありました。

そのひとつが、雪面にできたクラックです。

残雪期の大品山の雪面にできたクラック

ルート上には雪面が大きく割れた場所もありました。

 

春は雪解けが進み、斜面の雪が動くことで雪面に割れ目ができることがあります。

見えているクラックだけではなく、その周辺の雪の状態や斜面全体を見ながら歩く必要があります。

また、尾根上では雪庇にも注意します。

残雪期の大品山で雪庇の近くを通るトレース

雪庇の近くを通るトレース。見た目以上に張り出しています。

残雪期の雪庇が尾根から大きく張り出している様子

雪庇は尾根から大きく張り出していることがあります。

 

雪庇で怖いのは、見えている縁ぎりぎりに立たなければ大丈夫とは限らないことです。

実際の地面よりも外側へ雪が張り出しているため、見た目だけでは安全な尾根の位置が分かりにくいことがあります。

そして、先行者のトレースがあるからといって、その場所が安全とは限りません。

足跡をそのままたどるのではなく、地形や雪の状態を自分でも確認してルートを選ぶことが大切です。

今回のような穏やかな日でも、こうした危険要素がなくなるわけではありません。

 

下山で感じた春の気配

テントを撤収して下山していくと、雪のない場所にはふきのとうが顔を出していました。

大品山からの下山中に見つけた春のふきのとう

 

少し前まで雪の上でテント泊をしていたのに、標高を下げると春の植物が出ている。

雪山と春が同時に存在しているような景色も、この時期ならではです。

少しだけ山の恵みをお裾分けしてもらい、帰宅してから天ぷらにしていただきました。

雪の上で一晩過ごし、最後に春を感じて帰る。

季節の変わり目を感じられる山行になりました。

 

今回の山行を振り返って

今回は山頂を目指して歩き続ける登山ではなく、雪上テント泊そのものを楽しむ1泊2日でした。

テントを張り、雪から水を作り、食事をして、本を読みながらゆっくり過ごす。

翌朝には周辺を歩き、雪質の変化やクラック、雪庇などを確認しながら雪山を楽しみました。

登山の楽しみは、山頂に立つことだけではありません。

目的を決めずに歩くわけではありませんが、「今日はここで過ごす」と決めて山の中に身を置くことで、普段とは違った楽しみ方ができます。

一方、のんびりした山行であっても雪山であることに変わりはありません。

天候や雪の状態、地形などを確認し、その日の条件に合わせて行動することは必要です。

静かな雪山で過ごした1泊2日。

こういう山の楽しみ方も、これから大切にしていきたいと思います。

 

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